2018年5月31日(木)仙川二郎のブタの巨大さに二郎探検隊員、次々と圧死する!

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 5月31日木曜、仙川店へgo。ポケモンゴー。

 先だって、ここで鍋二郎を買って楽しく食したけど、店に入って普通に食ったことがないので、ラマッキー&ハッシーと一緒に3人で向かうことにしたのだ。

鍋とはいえ、一度食べたし、4人前を買って4人で食べたんだけど、まあ、ふつうに食べられる量だったから、ちょっと油断してましたね。

 

二郎はぜったいに油断はしてはいけない。

 

二郎は変転し続けているので、同じ店でもなめてかかると、手痛い目に遭うことがあるんだが、さて、それをおもいしらされる黄門様一行であった。

仙川は予想を越えて、いろいろとハードだった。

 

この店は夜しかやってない。昼やってないですね。

そのぶん少し早めの5時30分開店。5月あたまに行ったときは、開店時に少し並んでいたくらいだったから、今日も17時すぎを目指して新宿から東京八王子線に乗って、そんな名前じゃないか、まあ、そういうのにのって、仙川で降りて、店前に着いたのは17:11。つまり開店19分前ですね。その時点ですでに1人並んでいた。われわれは2番3番4番、運命の分かれ道。うーん。意味分かりにくい。まあ、とにかく開店したらすぐ座れるポジションに位置しました。1stロットちゃんです。

 開店前に並ぶなら「20分前」というのがひとつの目安ですね。

 20分前だと、だいたいファーストロットに入れる。(超人気店は知らないけど)。開店時刻あたりが一番混みますね。早めに行くなら20分前から並ぶのがいいようにおもう。

 おれたちの前に1人だけだから、当然、3人揃って座る。

 座りました。雰囲気が異様です。

 連れだってきてる人がほぼおらず、誰も何も喋ってなくて、つまり成人男性が十数人集まっているけど、みんな押し黙って緊張した面持ちで、どう見てもこれから食事をします、という雰囲気ではない。どっちかってえと、ちょっとこれから戦いです、というような空気で、まあ、二郎を戦いだとみなすと間違いではないけど、なんかとげとげしいです。

 店のこういう雰囲気は店長の気質も反映してるようにおもう。

 仙川店の店長は、まあ、あまり愛想よくないし、あまり喋らない。

 助手さんも似たような感じ。最初みてるかぎりは、どっちが店長で、どっちが助手かがわからない。

 このどっちが店長かわからん問題は、行き慣れてない二郎では、けっこうあります。たぶんあの人だとおもうけど、喋ったりまわしたりしてるのこっちだから、どっちだろうというやつ。仙川店はどっちも喋らないから、よけいわからんかったです。

 

 人が10人以上集まっているのに、誰も何の声も発しないという異様な状況で、でもおれはそういうところだと笑っちゃいそうになるタイプで、ハッシーとなんか静かすぎないかね、なんて話をしてたんだけど、でも、ふつうの声で話すと店にいる全員に聞こえてしまうので、やや声を落としてひそひそ声で話してました。まあ、とにかくちょっと奇妙な空間です。これはこれで楽しくもあるんだけど。

 

 仙川の店長は、仕事中には余計なことを話したくないタイプなんでしょうね。それはそうだとわかっていればいいわけです。

 

 黒烏龍を買ってこなかったし、店周りには飲み物自販機ないし(店所属の自販機は見当たりません)、買わずに入ったけど、これは失敗だった。

 

 おら、水呑みだからね。

 はい。代官さま。あっしは水呑みでごぜえますが。

 二郎を食うときにかなり水を呑むほうで、がんがん水飲まないと二郎が入っていかない。ほんとは黒烏龍を持ち込むのがいいんだけど、持ち込まなかったから、給水器の世話になった。

 給水器は入ってすぐの背後にありますが、席を立ってそこで汲むしかない。比較的近いところだったけれど、でも立って汲んでを5回くらい繰り返して、そんなことしてるのはおれ一人だったんで、けっこう目立ってた。悪目立ちですね。すげえ水で流し込んでる感じ。

 

 ラマッキーが「腹がたぷたぷになりませんか」と聞いてきたが、ならない。水ではふくれない。何となく、口内を冷ますというイメージで飲んでる。

 ものすごく静かにみんな二郎に向かってる(および二郎を待っている)ところで、何度も席を立って何度も水を汲むのは、その音ばかり響いて、みんな、見るものないから、水汲んでるおればかり見ていて、うーん、こんどからぜったいペットボトルを持ち込んで食べようと心に決めた仙川の春。

 

 ラーメンはふつうに濃い味で、量がかなり多い。

 量が多いとおもっちゃうと、頭が量の戦いモードが切り替わるので、味がどうかということは二の次三の次になってしまう。私の戦闘モードはそんな感じです。ときどき頭のどっかでうまい、と反応する部分はあるが、そんなのはどうでもいい情報として後ろにおいやられ、どう効率的に食えばいいのかという処理ばかりに頭がいっぱいになっていって、うまいかまずいかという情報は蓄積されない。ただ食べきることを最優先に進んでる。戦闘モードってそんなもんじゃないかとおもうんだけど、どうなんだろう。味はあとからおもいだす感じになる。うーん。

 

 うまかったとおもうよ。素朴に濃いかんじ。

 

 ヤサイは増さないとそんなに多くない感じだったけど、麺がかなりたっぷりあって、そしてもっとも暴力的だったのはブタ!ブタ!ブタ! 

 ブタブタブタ、われ、奇襲に成功せり。

 子供の握ったコブシくらいのブタが3つ、ブタブタブタ、いやあ、きっついですわ。ごろんごろんごろんと3つ入っていて、さわるとほろりと崩れるけど、味がしみしみってほどでもなくて、何とも肉塊としか言いようがない。攻めてくる攻めてくる。トラトラトラ。かなり苦しめられた。

 途中何度か囓って囓って、最後は1つ残ってしまって、それを囓りきって食べ終わったけど、ブタを最後に残すと苦しいですね。

 隣のラマッキーを見ると、ブタ3塊をそのまま残して、最後その3塊だけになって、それに突っ込んでいったんだけど、途中でその巨大化したブタの影に姿が見えなくなり、ああ、ラマッキー三尉、肉塊によって圧死、殉職であります。来週からはジーパン刑事編。なんじゃそりゃあ。それはジーパンの最後の言葉です。マカロニはおかあちゃんでした。はいはい。なんじゃこりゃ、か、ジーパン刑事。助けたアイダに撃たれた。

 

 まあ、おれは先に外に出て、ラマッキーはぜんぜん、出てこなくて、ハッシーより遥かに遅れて、肩で息しながら匍匐前進状態で出てきて、食べ切れたのかと問いただしても返事がない。見てみると、そこで絶命していた。午後5時41分。黙祷。

 黙祷やめ。

 やめなさい。

 すごく苦しみながら進んでるときは、肉塊が残ってると避けたくなるんだよね。でも避けるとあとでブタによって圧死する。そういうことです。ブタによる圧死警報が出たら気をつけてくだされ。やはり、麺・ヤサイ・ブタの三角食べが推奨されます。

ブタ圧死警報が出たら、命を守る行動に出て下さい。お願いします。 

とにかくブタの巨大さと、麺の多さに負けました。

三人とも何とか完食したけど、完食しただけという漢字で、気分としては負け戦でしたね。

 さほど覚悟せずに、軽くいけるだろうと歌舞伎町店を攻めるのと同じような気分で向かったのが敗因だったとおもいます。

 店によっては付属の飲み物自販機がないので、気をつけねばならないということもわかりやした。 

 肉の大きさと、あと麺の量の多さによって負けちゃいました。礼。

2018年5月11日(金)二郎をめぐる旅はとりあえず歌舞伎町から始まり、あっさり食べて、異界に触れる

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 さて、ラマッキーとハッシーと3人でいろいろ二郎をまわっていこうということで、最初は手近なところってことで歌舞伎町へ向かう。金曜の午後。

 ただ歌舞伎町店は、前はあの風林会館から曲がったらこれるクルマも通るそこそこの道沿い(花道通りとか言うらしい)にあったんだけど、最近になって探したらそこからなくなっていたんで、えええええっ、歌舞伎町の二郎がなくなったんかーい、とすごいショックを受けて、3秒くらい目をつぶってたことがありましたが、まあ、3秒だけですけど、そのときは見つからず、帰ってからインターネットで調べて、新大久保寄りのほうへ一本寄ったところに移ってたってことがわかって安心して5秒くらい目をつぶりましたな。ふむふむ。まえはわかりやすいところだったのに、今回の場所は、わかってないと見つけにくいディープなほうへ入ったわけですわ。うん。見つからないためではないかとおもった。

 

 まえ、ラーメン二郎本店に関係のある子から聞いたことがあったんだけど、とはいえ伝聞なので真偽定かならずですけど、歌舞伎町の店は、異様に長い行列ができると(本店とかみたいに30人とか並ぶと)土地柄、ちょっと怖いので、(怖い人につながってる店の邪魔になるとまずいので)あまり行列ができないようにしているらしい、というような話で、真偽定かならず信玄魚ならずだけど、まあ、そういう工夫をしているということを、その筋の子から聞いたことがあったので、何かそうかなあ、とはおもっているますで、なんかそういう感じです。

 そんなには混まない。

 新しいお店は、ゴジラから裏のほうへ入っていって、そのまたもうひとつ裏で、店前に行っても人が並んでないので、やっぱすいてるのかなあとおもって入ると、中に立って待っていた。立ち待ち。8人くらい。店内に立って待てる空間が広めにとってある。無理に詰め込めば30人くらい立てそうだけど無理に詰め込んじゃいけません。10人少々ってところかな。

 

 平日の午後3時にしては混んでるなあとおもったけど、でも、並んだらすぐに数席あいて、列がぐっと縮まりました。並んでた時間は10分少々、でもまあ、午後3時にしては混んでる。

 

 3人並んで座らせてくれた。店の人がそうしてくれた。んだったとおもう。

 そのへんは親切。

 3人で行って、べつだん並んで食べないと死ぬというような間柄ではないけど、並んで座ると少し嬉しいかなというくらいの心持ちですが、ここは並んで座れました。

 

「ラーメン」が700円。

(小)ではなくて、ラーメン。

 そういう小笑になっている。呼称です。小笑は笑遊の弟子。

 おれたちが食ってるあとに、少し先のカウンターに女子高生が1人で座ったので、すげえ驚いたら、すぐ隣に彼氏が座った。まあそういうことだよなとおもって、つまり女子高生が1人では来ないだろうせめてカップルだよねってことえすけど、それであとで女子高生いたねえ、と言うと、ハッシーは、いや違いますよ、あれは女子高生ふうの格好をしたOLだったんじゃないですか、と言うんだけど、うーん、そうかなあ、JKだったようにおもうけどな。なっとくいかない。夜だったら女子高生スタイルの28歳くらいのお姉さんがいても不思議ではない街だけど、あきらかに詐欺ですが、昼の3時だからねえ。とにかく油断ならねえや。

 とにかく若い女性客もふつうにやってきていてる店で、だからあまり怖くない店ですね。全体にゆるーい感じで、ぴりぴりしてない。まあ、ラーメン店はふつうそういうもんだけどね。

 

 ラーメンそのもののやさしめ。

 ヤサイもちょこっとのってる感じでボリュームたっぷりではなくて、ブタもそんなに主張はしてない。わりと、自己主張の少ない、クラスの端っこのほうにいたような感じのブタで、いいんですよそれで、はい。あまり人を苦しめようという意図を感じられないラーメンです。まあ、ほかの店が苦しめようという意図を抱いてるかどうかは定かではありませんが。

 食べてるときは、やっぱ、二郎だ、これは二郎だね、うん、二郎だよ、二郎だ二郎だ、おお、二郎だ、と食べるし、めちゃ多いわけじゃないけどでもたっぷりの分量であはあるから、そこそこ満足して、おう、うまかったよ、またくるぜ、と、まあそんなこといいませんけど、とりあえず満足して、食った食ったと歩き出して2分ほどしたら、うーんでもなんか二郎を食べたはずなのにどーんとこないなー、という感じになってしまいます。二郎であることは間違いないけど、そのあとどーんと来ないぶんちょっと物足りないな、しかし女子高生が来るとはなー、いえ、あれは女子高生ではありません、なんてことを漠然とおもうのが、それが歌舞伎町二郎。

 

 三人で外に出て、何となく店のすぐ先あたりで立ってると(写真とったりしていた)、すぐ近くを何だか読みながらふらふらと歩いてくる人がいる。

 酔ってるわけではない。でも不思議な歩き方で、よく見ると、何とも不思議な風体で、ポンチョなのかパジャマなのかわからない不思議なものを羽織っていて、半ズボンくらいの丈なので膝からずっと足が見えてるけど、その足部分にみっちりと刺青が入っていて、見事な刺青です、だからホームレスとかそういうのではなく、どう見ても堅気ではないし、歩き方は変だし、さすが歌舞伎町の午後3時はちがいます、晴れて明るいけどどっかしらに冷やっとした空気が流れていて、こういう街では、そういうことに気付くかどうかで処世がずいぶん違ってきますな。

 何となく遠巻きにその異体な男を眺めていて、何も起こってないし、何か起こるわけではない。人もあまり気にしていない。

 でも、こういうあきらかな「異世界へとつながってる異人」が歩いてるのが歌舞伎町ですな。気付く人だけ気付くところがおもしろいところで、こういう街の空気を乱すと、魔界が怒りだしてしまうので、そういう手の人たちがのさばってるんでしょうなあ。うんうん。歌舞伎町店、またいきたいねー。

2018年5月2日(水)、仙川二郎で鍋二郎を頼みテイクアウト、焼酎とともに二郎を食うという至福の時間。

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  文藝春秋の仕事で鍋二郎に挑むことになった。

 『最高の焼酎と最高の料理』というムックで「ラーメン二郎にはどの焼酎が合うか」という企画ページが立てられてそれを書くことになったのじゃよ。ムックって、ブックの形をしたマガジンというのの合成語の、つまり雑誌的な内容の書籍ってやつです。まあそのへんは何でもいいんですが。

 考えたのは文藝春秋の編集者のシバシーくんで、くんったっておれより年下だけどもう50そこそこのはずだ。かつてフランス人女性と付き合っていたことがあるのが自慢だったが、まあ、デブくん編集者である。でないと二郎と焼酎なんておもいつかない。そもそもラーメン二郎は酒飲みながら食うものなのか、という根本的な問題がある。ビールだしてる二郎ってあんまりないからなあ。そもそも巨大な量を食うってのに、酒で腹を膨らませたらよくないだろうという危機感は動物なら持ってるはずで、あまりビールを頼む気にはならないからな。

 今日はテイクアウト。鍋二郎。

 仙川がテイクアウトできるってことはシバシーがネットで調べていて、仙川からでクルマで下北沢のキッチンスタジオまで運ぶことになっている。仙川駅前でシバシーとカメラマンと、学生(3年)ハッシーと待ち合わせして、時間に行くと、まあ、当然のように学生だけいない。ハッシーはそんな感じ。

 仙川店は基本、夜だけで、開店17:30。なので集合は17時でした。

 もうひとり学生(2年)ラマッキーは、先に下北沢のキッチンスタジオへ行って、部屋を開けて、そこで待機してる係。ラマッキーは代官山にすむお代官みたいな学生である。見た目は朴訥だが、住まいはお代官さま。

 さて、シバシーとカメラマンとおれで開店15分まえの仙川店へ並ぶ。まえに4人ほど並んでいる。ここは店に沿って並んで、店端までくると列を曲げるってところで、一列5人ってところなんで、ちょうど列が折れるところでシバシーと並ぶ。そっち側のドアも開いてたので、シバシーはおじさんらしい厚かましさをかまして、ふっと店の中へ頭だけを入れて「鍋二郎をお願いしたいんですが」と鍋を見せつつ言うと「5時半からだから」と一喝されたらしい。「こっええー」とすくんでいた。五十こえても店のおやじに怒鳴られるとへこみます。まあ、フライングしてるのがいけないんだけど。

 仙川店の店長は、怖いというより無愛想系ですね。

 あまり客と喋りたくない感が強く出てる感じ。イメージだけど。

 開店したら順に食券を買って、それを出して「鍋二郎」を頼むんだろうとおもってたら、どうもそうでもないらしい。

 おれらよりあとに来て、わっかりやすく鍋を手にもってぶらぶらやってきたお兄さんが、来たのがだいたい5時半で、つまり先頭が食券を買い出すくらいのタイミングですね。お兄さんは鍋二郎ベテランって感じで、そのまま食券買わずに、さっきシバシーが顔をつっこんだうしろのほうから、「鍋お願いします」と頼んだら、そっちから、すっと出してもらっていて、うーん、初めての店での初めてのテイクアウトの頼み方って難関すぎます。

 鍋二郎として、おれらは順番ぬかされてることになるんだけれど、鍋二郎の並び方も頼み方もわからないので、どうしようもない。まあ、鍋二郎そのものが裏ワザなわけで、通い慣れてる店で、顔見知りになった店長に頼むもの、みたいなのが正当なところだろうから、初めての店でテイクアウト頼んでいて後手に回るのはしかたないところではありますがね。ふむふむ残念残念。

 

 しかもこの仙川の鍋二郎は値段が違った。

 まあ、このときだけだったのかもしれないけど、食券の値段とは違う。

 仙川の鍋二郎は、麺を茹でないで、そのまま渡してくれるので、つまり作られるのを待つ必要がない。中で食べる人と別に外で待っててそのまま受け取る、そのときに現金で払う、ってシステムみたい。

 シバシーは、順番が来たときに券売機で買わずに店長と交渉していて、その交渉内容は聞こえなかったんだけど、どうやら、4人前で2000円、つまり1人前500円になるらしい。券売機で「小」を買えば700円だから4人前2800円なのに、テイクアウトだと2000円。つまり1人前500円。おお。すごい良心的じゃん。

 シバシーはなんか帳簿にのせなくていい怪しい処理のためではないか、なんて勘ぐっていたが、それは週刊文春とかやっていて世の中の悪いやつばっか見てっからだとおもう。あきらかにいろいろサービスしてくれてんだとおもうな。

 

 麺は茹でてないのを4人前。それをスーパーでもらうビニール袋みたいなのにざっくり入れられて、そのへんの雑な感じも二郎らしくていいですね。鍋はふたつ用意していて、1つにスープを入れてもらい、もう1つに具材を入れてもらって、それで運ぶ。

 カメラマンさんのクルマで移動。仙川から下北沢までさくっとはいかない。けっこうかかった。やっと買い終わったあとに仙川駅にのこのこあらわれた学生3年ハッシーにはスープ鍋を持ってもらって、おれも具材鍋を持って、クルマに乗り込む。スープが熱いので、スープ鍋を抱えたハッシー学生3年は、膝にあたるたびに、熱い熱いと言っていて、けっこう熱いスープなのです。

 

 さて、小一時間かかって下北沢のキッチンスタジオにたどりつく。

 まず、スープを温める。

 そして麺を茹でる。たっぷりのお湯で茹でるが、そういや、どれぐらい茹でればいいのか聞いてなかったとおもい、学生たちに「茹で時間、鍋二郎、でググって」と頼んでみると、ハッシーが「8分ですね」とすぐに回答をみつけてきて、インターネット時代は便利でげす。そのとおり8分茹でる。

 あとでちょっと長かったかも、という意見もでたが、おれはこれでよかったようにおもいます。

 

 丼を4つ用意して、まず麺入れて、それからスープをかける。具材の鍋にあるものを、文藝春秋シバシーはいっしょにぐざっと入れようとするので、身を挺して止めて(あたりまえだ)、まずブタを二きれづつのっけて、そしてヤサイを山型にどさっとのっけて、それから丼の端にニンニクをそれらしく盛り付けて、シバシーは、おお、それらしいじゃん、と感心するが、当然ですわい、ごちゃごちゃ混ぜてのせたらうまそうに見えないし、そもそも写真とってムックにのせるんだから、それぐらい考えろよとおもったが、シバシーはフランス人女性と付き合ったことが自慢だから、そういうことは気にしない男なのだ。うぬうぬ。現場はいつも混乱に満ちている。

 

 さて、焼酎は、5種類用意されていた。

 黒糖。芋。米。麦。泡盛

 この5つの焼酎を飲みつつ、どれとラーメン二郎(仙川テイクアウト版)が合うかを試してみるのだ。

 

 やってみるといいけど、めっちゃ、楽しい。

 

 酒を飲みながら、人とべらべら話しながら、それでもある程度のペースで二郎をがつがつ食っていくのが、こんなに楽しいとはおもわなかった。

「こんなに人と話しながら二郎を食ったのは初めてだ」と言ったが、そうですね。二郎ではラーメン提供後の会話は、基本、禁止ですからね。そういう緊張感がないだけで、そのゆったり感がとても楽しい。

 

 しかも焼酎、めちゃうまい。

 まあ、文藝春秋が、焼酎本のために用意した焼酎だから、うまいに決まってる。

 おれが感心したのは「麦焼酎」である。

 芋や黒糖などに比べて、麦は、なんというか、あまりそんな主張のない味と香りだとおもってたから、なめてかかってたが、本物の麦はちがう。めっちゃうまい。めっちゃ香りたかい。それでいて上品。飲みやすい。あとをひく。すげー。

 麦焼酎「野海棠」というやつだ最後の「棠」というのが見慣れない文字だ。

 めちゃめっちゃうまい。

 でもそれは、知りたかったような知りたくないような、つまり日頃いつも手に入れられるものならうまさを知ってもいいけど、簡単に手に入らないのにそういううまいものがあると知るのは幸せなのか問題で、アフリカなどの飢餓に苦しんでる子供たちにチョコレートあげるんじゃないぜ問題でもあるんだけど、そういうやつです。飲んだこともない至高の旨さでした。なんなんだろうね。こういう差ってのは。

  でも、その麦がめちゃうまいと唸ってたのはおれだけで、残りのシバシーも、ハッシーもラマッキーも、それぞれべつの焼酎がうまいっていったので、好みでそれぞれですよ。

 どれが二郎と合うかっていうと、いや、どれでもいいよ。まじで。

 おれは、二郎はいろいろ味が強いから、焼酎としては「黒糖」が合う感じがした。相性でいえば黒糖がいい。

 ただ飲むなら麦の「野海棠」。

 どれが二郎と合うかという意見では、文藝春秋シバシーは芋、3年ハッシーは麦、2年ラマッキーは泡盛、ときれいに分かれた。きれいに分かれすぎ。

 結論としては、どれでもいいよ、ってことになる。

 

 うまい焼酎と二郎はそこそこ合いますし、でもそれはテイクアウトでしか楽しめない。そういうことだぜ。

 

 テイクアウトの鍋二郎は、めっちゃ楽しい、ということがきちんと確認できた。

 よかった。

 

 

2018年4月23日(月)、三田二郎本店にていきなり列最後尾の断り役を担うが、強敵あらわる

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  二郎をまわろうと、ずいぶん前に決意をしていたのだけれど、なかなか旅立てずに、やっとこの4月23日(月)、ハッシーと三田本店へ出向くことになった。

 高田馬場に18:30に集合して、田町から急ぎ二郎へ。東京タワーが見える。武蔵野に国木田独歩のように暮らすハッシーは都会の塔にしばし見とれる。田町駅ですでに19時をまわっていた。慶応大学の前を通るのが19:10を過ぎている。栗の王者慶応。

 ひょっとしたら、もう列が締め切られてるかもなあ、と急ぎ近づいていくと、三角ビルを曲がって、裏口に列が伸びていて、その最後尾に太った店のお兄さんが立っていた。うわ。うわ。もう締め切ったかとあせると、お兄さんが「食べますか?」と聞いてくる。食い気味に「くいくいくい」「食べます」と答えると、「じゃ、ここで締め切るので、あと並んだ人を断ってもらえませんか」と頼まれた。

 

 なな、なんと。

 二郎冒険の最初から「断り役」を担うとは、何ということであることであることか。

 先の帝の御代に三田本店には一、二度きたことがあって(昭和のころに2回ほど来たことあるってことですな)その後も平成時代も何年かに一度はやってきていたけれど、わりとひさしぶりです。ハッシーは二郎初体験。

 わたしホリケンより、どうみてもハッシーのほうが人当たりがいいから、じゃあ、ハッシーが来た人に断ってね、というと、ええええええええっと、とぶるぶる震えだす。ふるえるなよ。なんだよ。

「いやだって、ど、ど、ど、どんな、だって、どんな」

 落ち着いて。

「いや、危ないですよ」 

 よくわからん。

 お店は20時までだけど、列が締め切られたのはこの日は19時15分。まあ日によって違うんでしょう。26,27人くらい並んでた。

 でもまだ19時15分だから、二郎を食べたい人はやってくる。

 あきらかに堂々と近寄ってくる人は「あ、もう、終わってますので」と言いやすいが、なーんとなく近寄ってきて、なーんとなく遠巻きにして、小動物のようにそそっと近寄ってくる人は声をかけにくい。もう締め切ってますよ、と言ったら「えー、なになに、おら、ならんでるんじゃないんだもんねー、このへん通っただけだもんねー」と言うかもしれないので(ぜったい言わないだろうけど)、つまりあきらかに並ぶ意志を見せないと断れないってことなんですよ。こっちも断るの素人なんで。みんな、締め切られてそうなときは堂々と並ぼうとしてほしい、そして堂々と断られて欲しい。それが断り役の願い。ほんと、何となく見てるのか、並ぼうとしてるのか、ちょっとわからない人がいるんですよね。真後ろに並ばないで、3メートルほど離れて立ったりして、断りにくいっすよそれ。時代劇の斬られ役は斬られたとわかるように斬られるから斬られ役らしく見えるわけで、何というか、そういうのを希望します。いや、何となく。

 

 なんだかんだと、数分に一人くらいのペースで二郎食いたいマンがやってきました。

いちいちやさしく断りました。

 一人、びしっとしたスーツの紳士がやってきて、もう、いかにも慶応大学OBでばりばりやってますって感じで(意外と早稲田かもしらんが)、その人にもう締め切りましたというと、ああ、と爽やかに納得して道のほうへ出て、すっとタクシーを止めてました。おお。かっちょいい。二郎から二郎へ、タクシーを走らすエグゼグティぶーなさらりーまん。かっちょいい。どこの二郎へ走るんだろう。三田からだと、うーん、品川か、目黒か。そのへんかなあ。いっそ、京都店まで、なんて言ってたりして。それはただの馬鹿ですね。まあ、目黒は遅くまでやってるから目黒かなあとおもったな。

 断り役をやってるだけで、なんかいろんなものが見られます。

「いや、誰も怒らないですね」とハッシーは言う。

 彼はもっと怖い客を想像していたらしい。危ないってそれか。

「なに、もう締め切っただと、おらおらおら、おめえか、おめえが食わせないのか」と迫られるにちがいないとおもって、怖かったらしい。そんな人はいません。二郎好きな人はみんな紳士です。すくなくともこの日はそうだった。

 

 列がどんどん短くなり、待ち時間が20分を越え、そろそろ入口が近くなってきたとき、時間としては19時45分をすぎてましたかねえ、店まで並んでる人が6人くらいになったので、そろそろ食券を買いにいかなきゃというときに、また、並ぼうとした人が来ました。これはカップルでした。あ、もう終わりましたから、と声をかけて(最初ああはいったけど、けっきょくハッシーと私は交互に断り役をやっていたのだ)、私は食券を買いに店内に入って600円というちょー安い食券を2枚買って、列に戻ってきた。けれど、その夫婦はまだ立っていた。

 見た目は五十代くらいかなあ、なんというか、ロハスぽいというか、自然好きぽいというか、まあ、本物のロハスが二郎に来るとはおもえないけど、見た目の感じですね、独歩じゃない武蔵野中央線沿線の匂いがするようなカップル、その二人は、ぼんやりと立ったままなのだ。

ハッシーが、あ、ダメなんで、ともういちど念を押していると、

「えー、でもー」

と女性が答える。

 ええっ。ええっ。えええええっ

 断られても、「でもー」と言えば許してもらえるって雰囲気を出されても困るし、まあ、十九歳の女子大生はそういうことをやりますけどねえ、一女はずるいよ、いえ、べつだん非難ではありません、でもその戦法でこられるにしては、見た目も年齢もかなりきつくて、髪が長いからいいでしょってものでもなくて、いやいやいやいやー、でもー、で押し通すのはやめてくださいよー。アジアの露天で値切ってるんじゃないんだから。アジア旅も慣れてるわよ、という雰囲気がないでもない。どうでもいいんだけど。

  とりあえず断られても「えー、でもー、でもー」と言ってれば、何となってきたんだもんわたし、という雰囲気をだしていて、かなり怖いです。

 再び私が「ダメだよ、もう締め切ってるんだから」と強く出たがそれでもまだ「えー、でもー」と反応してきた。

  うわうわうわ、怖い怖い。切れられるよりすごく怖い。聞いてない。人の話を聞いてないし自分のおもいどおりにしようとしていて、怖い怖い。ホラーじゃん。

 列を締め切ったの19時15分で、それからもう30分経ってるし、あり得ない、その間に二十人くらいの客が入ってくのを待ってたわけで、いまからここに入るのはどう考えても理不尽なんだけど、その理不尽を越える理不尽存在として、そのあぶらっけがない五十代の髪の長い女性と、そのうしろにひっそりと立つ男性は去らないのであった。

 悪夢か。

 何の試練でしょう。

 

 と、その二人のうしろに、ちょっと太った若者が並びはじめた。

 いかんいかん。謎の列が形成されそうになっている。

 あわてて、うしろのほうの入口のほうへ私は駆け寄って店の中へ向かって「あのー、最後尾で列を断ってたものなんですけどー」と声が裏返りそうになりながら小さく叫んでしまった。(すでにゾンビものの映画の登場人物みたいな気分になってます)。「断っても断っても断っても、生き返り死に返り、去らないお客さんがいますので、なな、なんとかしてください」というような意味のことを言った。いや、そんなことは言ってない。でもなんか言った。よくおぼえてない。とにかく手に負えないとは言いました。

 店から太った店員さんが出てきて、うしろの3人に丁寧に「もう、いまお並びの方で麺がなくなってしまったんですよ」と穏やかに説明した。そのゾンビ女性はまだ「えーっ」といいつつ、さすがに納得するしかなくて、納得して、消えていきました。目を離してふっと振り返ると、もう、そこには誰もおらず、シートがぐっしょりとなっていました。

 なんて、シートって何だよ。どんな怪談だ。濡れてません。

 

 ふー。大変だった。

 

 われわれは44分待ちで、だいたい20時直前に入店、入ってまっすぐの奥2席に案内されました。三田本店は、水は出してくれるのがいいですね。水を飲むと店の人が注いでくれる。そんなサービスは本店だけ。すごいね。

 本店はカウンター低くて、なかの作業がぜんぶ見えてるのがとても楽しい。

 やはり麺がたっぷり、スープは少ないよなあと感心して見ている。

 おれたちが最後なんで、食べ終わった客はどんどん去って、そのあと誰も座らない。食べてるうちに、がらがらの店内に5人ほどという風景になって、本店のこんなすいてる風景をみるのも珍しいなあ、とおもいました。

 本店のラーメンは、やっぱいいよなあ。これで600円。すばらちい。

 ハッシーは二郎初体験なので、いろいろと緊張していましたが、無事、完食。無事、帰りました。

 帰り道に、あのロハスな夫婦が待ち伏せしてるんではないか、おれたちを倒しておれたちのどこかから二郎エキスを吸うんじゃないかとハッシーは恐れて、手を振り回しつつ歩いてましたが、三田は都会なので、そんな悪が潜むスペースはありませんでした。

 よかったよかった。

 

 そういえば高田馬場「べんてん」では、列の最後尾で「そのあとから来る人を断る役」をやると、卵などをサービスしてくれたもんでしたが、二郎はそういうのあるんだろうか、あったら、逆に食べられなくなって死ぬよなあ、と恐れてたら、そんなのはありませんでした。なくてよかったです。

 いきなり初二郎で、列の断り役をやるハッシーというのもかなり二郎の引きが強いなあとおもった、二郎冒険の始まり。

 

ラーメン二郎の冒険へと旅立つこと

 この記録は、先の帝の御代、まだ、地に星、空に龍、森に妖精があり、人々が人々の噂をして暮らしていたころ、まあだいたい平成30年くらいっすけど、そのおり、何も持たず何も抱かず、何も知らないまま「点在するラーメン二郎直系店」をめぐった者たちの記録である。ちょっと前の記録です。

 ホリケンと、ハッシー、ラマッキーを中心に二郎をまわった。なぜそんなことをしたのか、いまとなってはわからない。

 ただ、彼らはひたすら二郎を食べ続けたのである。

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